行きかう車に、時折りふわっと香る潮の香。
長崎県川棚町、栄町アーケード。かつての賑わいの面影を残すこの場所に、私たちがつくりあげる『暮らしのヒトタナ市』とは、「棚一つ分くらいの小商い」を指す言葉です 。
大きな資本も、立派な店舗も、最初から必要ありません。
自分が大切にしている「好き」や、誰かに届けたい「得意」を、まずは棚一つ分のスペースから表現してみる。ここは、そんな「誰かのはじめの一歩」を全力で応援するために生まれた新しいマルシェです 。
会場を歩けば、コーヒーの香りや手作りの雑貨、誰かの挑戦が作りだす、新しい商いのかたちに出会うことができます。
川棚町が「応援の町」になるまで

川棚町が位置する東彼杵郡は、今、非常に面白いエリアです。
隣接する波佐見町は「波佐見焼」という強力なブランドを軸に、若手作家や感度の高いショップが集まるデザインの町として全国に知られています。
また、東彼杵町もここ10年、お茶の文化をベースにしたまちづくりが急速に進み、県内外から多くの人が訪れるエリアとなりました。
その二つの町に挟まれた川棚町。
この10年、目立った動きがなかった川棚をリブランディングするにあたり、私たちは川棚の歴史や魅力に改めて立ち返りました。
約30年前まで、川棚の人口は今の約5倍。
かつて川棚の商店街が最も活気に溢れていた頃、そこには自分の商売に誇りを持ち、一生懸命に「商い」を営む人々の姿がありました。その一人ひとりの「個」の輝きこそが、町の活気を生み出していた。
それなら、今の時代における「川棚のまちづくり」とは、再びこの町で、自分のやりたいことを商いにして輝く人を増やすことではないか。
そう私たちは考えたのです。
ヒトタナ市ってどんな場所?

『暮らしのヒトタナ市』は、単なるマルシェイベントではありません。
すでにお店を営んでいる人も、商いの経験が全くない人も。
自分が大切にしている「好き」や、誰かに届けたい「得意」を出店しています。
初めての出店の方は、「棚一つ分くらいの小商い」⇒「ヒトタナ」を使って出店も可能。
会場に並んでいるのは、この町で暮らす人、また、この町に惹かれてやってきた人たちの「挑戦」そのものなんです。
2026年2月現在、このヒトタナ市は第3回の開催を迎えました。
第1回は、川棚町の方々を中心に約20店舗の出店者がそろいました。
会場となった川棚商店街には久しく人の行きかう賑わいが。

趣味で作っていた雑貨の出店、移住してきた方のコーヒースタンド、いつかの夢だったDJデビューなど、ユニークな出店と笑顔が溢れる一日となりました。



第2回は、川棚で約30年前まで行われていた夜市を再現。

商店街の方々にも協力していただき、ヒトタナ市と従来の夜市がコラボするような一夜になりました。


第3回は、商店街の空き店舗を活用して20店舗以上が出店しました。

バレンタインデーを控えていたこの日は「贈りもの」「あたたかいもの」をテーマに、雪の寒い日をほっこりと温めるような商品が並んでいました。

子どもから大人まで、初めての出展者も多く参加し、新たな挑戦と交流が生まれていました。


また、昨年無人駅化したJR川棚駅や商店街の空き店舗を活用し、商いを楽しむ人たちの姿が溢れていたのも印象的でした。


「応援の連鎖」を町のインフラに

私たちが思う川棚町の最大の強みは、この町に流れる「応援する土壌」にあります。
かつて商いが町の支えとなっていた川棚には、新しいことを始めようとする人を「お、面白そうなことやっとるね」と自然に受け入れてくれる、見守る文化が根付いています。
この、ちょっとお節介で温かい「応援の連鎖」こそが、何物にも代えがたい川棚町の温かな魅力なんです。
「ヒトタナ市」がこの町に馴染んでいるのは、出店者が一人で頑張るのではなく、周りのみんなが「どうすればもっと良くなるか」を一緒に考えてくれるから。
隣の店主と励まし合い、訪れるお客さんがその挑戦を商いとして応援する。
ハードな設備を整える以上に、挑戦者の背中を押し続ける。
そんな「応援」のネットワークが、「はじめの一歩」が踏み出しやすい町にしている魅力だと感じています。
2026年度、さらに広がる「ヒトタナ」の輪

「いつか自分のお店を持ってみたい」
「自分の得意なことで、誰かを笑顔にしたい」
そんな想いを持っている方へ。
川棚町には、あなたの「やってみたい」を面白がり、応援してくれる仲間がいます。
まずは棚一つ分の「ヒトタナ」から、あなたの物語を始めてみませんか?
2026年度、暮らしのヒトタナ市はさらに形を変えながら進化していく予定です。
今年度は、新緑がまぶしい5月末頃、川棚の夏の夜を感じる夜市、そして街が煌びやかに彩られる冬のクリスマスマーケットの異なる3つの形式で開催を予定しています。
私たち「さかのまち企画」は、これからも川棚町で挑戦するすべての人の伴走者でありたいと思っています。
まずは一度、遊びに来てください。この町に流れる、温かくて、けれど新しいことに挑む時の少しワクワクするような空気を感じていただければ幸いです。
文 平野 蒼
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こんにちは。さかのまち企画「ヒトタナと暮らし」編集部の平野蒼です。
川棚町で暮らしたい、何かを始めたい──そんな想いのそばに立つ伴走者として。
(一社)さかのまち企画では、移住や小商いの一歩を支える相談窓口を運営しています🏠
『みんなの「やりたい!」を応援するまち』というコンセプトをもとに、思いを持つ誰もが気軽に挑戦できる町を目指して、情報発信やイベント企画などに取り組んでいます。




